今日、傘の骨組みが一本折れた。
しかも「ちょっと曲がった」とかじゃない。
完全に折れた。
まだ使えなくはないけど、開くたびに微妙に斜めになる。
傘を差しているのに、若干濡れる。
そこでふと思った。
傘って、全然進化してなくない?
よく考えてみてほしい。
私たちが使っている傘って、昔からほとんど変わっていない。
棒があって、骨があって、布が張ってあって、手で持つ。
以上。
もちろん、細かいところは進化している。
ワンタッチで開いたり、軽量化されたり、折りたためたり、撥水性がすごかったり。
強化された骨組みの傘もある。
でも、最終的にやっていることは、
「頭上に布を広げて雨を避ける」
これだけだ。
たまにテレビやSNSで、未来の傘みたいなものを見ることがある。
手で持たなくてもいい、かぶるタイプの傘とか。
風に強い特殊な形の傘とか。
濡れにくい構造の傘とか。
「おお、傘もついに進化したか」
と思う。
でも、次の日に街を歩いてみると、
みんな普通の傘を差している。
結局そこに戻ってくる。
そもそも、傘にそんなにお金をかけない
ここで私は思った。
もしかして、傘が進化していないんじゃなくて、私たちが進化を求めていないのでは?
だって傘って、壊れる。
強風の日なんて、びっくりするくらい簡単に壊れる。
骨が曲がる。
布が裏返る。
最悪の場合、傘そのものが飛んでいく。
そして駅に着くころには、
「これ、もう傘じゃなくて残骸だな」
みたいな状態になる。
そんなものに、ものすごいお金をかけたいだろうか。
たとえば5,000円の高級傘を買って、強風の日に骨が折れたら、
「……。」
となる。
一方で、1,000円くらいの傘なら、
「まあ、傘だしな」
で済む。
この差は大きい。
壊れることが前提のものに、人はそこまでお金をかけない。
だから、傘は「絶対に壊れない最強の道具」を目指すより、
「壊れたら買い替えればいいくらいの値段」
に落ち着いているのかもしれない。
高級傘という選択肢もある
もちろん、世の中には高級な傘もある。
鋼球を落としても大丈夫そうな、めちゃくちゃ丈夫な傘。
見るからに強そうな骨組み。
ブランド物の傘。
たぶん大切に使えば、普通のビニール傘よりずっと長持ちする。
でも私は思う。
それを雨の日に持って歩く勇気がない。
だって傘って、どこかに置き忘れる可能性がある。
コンビニ。
飲食店。
会社。
駅。
そして帰宅してから、
「あれ?傘は?」
となる。
高級傘を失くしたときの精神的ダメージは、雨より強い。
だったら私は、多少壊れても「まあいいか」と思える傘を使いたい。
そして、傘には「雑に扱える」という強さがある
考えてみれば、傘ってかなり便利だ。
折りたためる。
軽い。
持ち運べる。
雨を防げる。
晴れの日には日傘にもなる。
しかも、電源もいらない。
充電もいらない。
アップデートもいらない。
スマホみたいに、
「傘のソフトウェアを更新してください」
なんて言われることもない。
これ以上、何を求めればいいんだろう。
「自動で家まで帰ってきてほしい」
くらいしか思いつかない。
それはもう傘ではない。
もしかしたら「進化しないこと」が完成なのかもしれない
傘は進化していない。
でも、それは傘がダメだからではない。
むしろ逆なのかもしれない。
もう十分だから、進化する必要がない。
雨を防げればいい。
持ち運べればいい。
壊れたら買い替えられるくらいの値段ならいい。
そう考えると、今の傘ってかなり完成されている。
何百年も経って、結局みんな同じような形のものを使っている。
そう考えると、ちょっと面白い。
スマホはどんどん薄くなって、カメラの性能も上がって、AIまで搭載されるようになった。
車も自動運転に向かっている。
掃除機は勝手に部屋を掃除してくれる。
冷蔵庫だって賢くなっている。
なのに傘は、
「雨なので開きます」
くらいで止まっている。
そして今日、私はそんな完成された傘の骨を一本折った。
傘は進化しない。
たぶんこれからも、劇的には進化しない。
だって私たちが求めているのは、
未来の傘じゃなくて、今日の雨を防いでくれる傘だから。
……とはいえ。
次に買う傘は、もう少し骨が強いやつにしようと思う。